ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%および外用泡状スプレー0.3%の一般名処方について

 

ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%および外用泡状スプレー0.3%の一般名処方について

 

【般】ヘパリン類似物質スプレー0.3%

と処方箋に記載されていれば、


ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%「△△」

ヘパリン類似物質外用泡状スプレー0.3%「〇〇」

 

患者様の希望に応じて、調剤薬局では上記のどちらを調剤してもよいというルールとなっています(日医工MPIへ確認)。そこで、今回は「外用スプレー」と「外用泡状スプレー」の違いについて調べてみました。


スプレーとは

 

「スプレーの定義を確認してみると、液体を霧または泡などの状態で噴霧する装置」と記されています。処方箋に一般名で「スプレー」と記されている場合は「霧または泡で噴霧する製剤」と解釈されますので、「外用スプレー」「外用泡状スプレー」どちらを調剤しても良いという解釈となります。では、以下に外用スプレーと外用泡状スプレーの違いについてまとめます。

 

注意)外用スプレーも外用泡状スプレーも効き目、主成分の含量は同等です。

 

日東メディックという製薬会社は

ヘパリン類似物質外用スプレー「ニットー」および、ヘパリン類似物質外用泡状スプレー「ニットー」という両製剤を販売しておりますので、今回は「ニットー」の製品について、その特徴を調べてみました。(以下、外用泡状スプレーのことを“泡状スプレー”と記します)


添加物の違い

 

外用スプレーは霧状に液体を散布する製剤であるのに対して、泡状スプレーは、たくさんの泡を作る必要があります。そのため、両製剤に含まれる添加物には大きな違いが確認できます。

 

外用スプレーの添加物

外用スプレーを霧状に均等に噴霧するための一番の敵は「泡」です。容器内部やノズル周辺に泡がまたってしまっては、均等にミストを噴霧することはできません。そこで添加物の特徴として泡立たないような安定化剤(界面活性剤)が選択されています。

“ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール“という長い名前の添加物が含まれているのですが、この成分は低気泡性の界面活性剤(安定化剤)と呼ばれており、その名の通り、”泡立ちをおさえた”界面活性剤という役割があります。


それに加えて

カルボキシビニルポリマー:ゲル状にして皮膚になじみやすくする成分

ヒプロメース:粘稠性をUPする成分

 

という2つの成分が液体に“とろみ・粘稠性”をつけることで過度の泡立ちを抑える働きがあると私は考えております。


泡状スプレーの添加物

外用スプレーとは対照的に、泡状スプレーの特徴は、泡をたくさんつくることです。

 

ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60:非イオン性界面活性剤

ラウロマクロゴール:非イオン性界面活性剤

ステアリン酸ポリオキシル40:非イオン性界面活性剤

 

添加物を確認してみると3種類の界面活性剤(泡をたくさんつくる成分)が入っていることがわかります。(シャボン玉を作るときに3種類くらいのシャンプーやボディソープを混ぜると良く泡立つのと同じ原理のような気がします。)


さらに

D-ソルビトール

ヒアルロン酸ナトリウム

という2つの成分が含まれることで、皮膚に塗布後の保湿・粘稠性に寄与しているものと思われます。

spray 

容器の違いについて

 

外用スプレー

イメージとしては霧吹きと同じような感じです。ノズル(噴霧口)部分に細かい穴があいていて、そこを泡立ちにくい液体が通過することで霧状(ミスト状)の液体が噴霧される仕組みです。

 

泡状スプレー

ワンプッシュすると、液体が容器の内部にあるチューブを通って吸いあげられます。このままでは泡状にはなりません。泡がでてくる部分の直前にメッシュ状(網状)の通過部位(目の細かなザルのようなもの)が設置されています。このメッシュ部位を泡立ちやすい液体が勢いよく通過することで泡が作られる仕組みです。

 

以上、添加物の違い、容器の違いに着目して

“ヘパリン類似物質外用スプレー”と“ヘパリン類似物質外用泡状スプレー”の違いを記しました。

 

調剤する際の注意点

調剤する際に、1点だけ注意があります。

先発品のヒルドイドフォーム0.3%が1本92gであるのに対して、ジェネリック医薬品はすべて1本100gまたは200g入りの製剤です。


そのため

【般】ヘパリン類似物質スプレー0.3% 92g

と処方箋に記されていた場合はヒルドイドフォームを意味します。

 

【般】ヘパリン類似物質スプレー0.3% 100g

と処方箋に記されていた場合は後発品の外用スプレーまたは外用泡状スプレーを意味します。


 

🧪 薬理作用

ヘパリン類似物質は、構造的には天然ヘパリンに類似した合成化合物で、以下のような多面的な作用を示します:

1. 保湿作用

  • 角質層の水分保持を助け、皮膚の乾燥を改善。
  • 水分保持機能の回復により、バリア機能の改善にも寄与。

2. 抗炎症作用

  • 軽度の抗炎症作用があり、炎症性サイトカインの産生を抑制。
  • アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎などの炎症性疾患に有用。

3. 血行促進作用

  • 毛細血管の血流を改善し、皮膚の代謝を促進。
  • 打撲やしもやけ、瘢痕の治癒促進にも応用される。

4. 抗凝固作用(局所)

  • ヘパリン様作用により、局所の血液凝固を抑制。
  • 血栓形成の予防や改善に寄与(ただし全身性の抗凝固作用はほぼなし)。

⏱ 効果持続時間

ヘパリン類似物質スプレーの効果持続時間は、薬理作用の種類と使用部位によって異なりますが、以下が一般的な目安です:

作用 持続時間の目安 備考
保湿作用 約6〜12時間 1日2〜3回の塗布が推奨されることが多い
抗炎症作用 数時間〜半日程度 継続的な使用で効果が蓄積される
血行促進作用 数時間 打撲や瘢痕治療では1日数回の使用が効果的

※スプレー剤はクリームや軟膏に比べて皮膚への滞留時間が短いため、持続時間はやや短めとされます。乾燥が強い部位や夜間の保湿には、より密着性の高い製剤(クリーム・軟膏)の併用が推奨されることもあります。


🧴 使用上のポイント

  • 塗布回数:通常は1日2〜3回。症状や部位に応じて調整。
  • 使用部位:顔面、四肢、体幹など広範囲に使用可能。粘膜や創傷部位への使用は避ける。
  • 副作用:まれに接触皮膚炎(かぶれ)、刺激感、紅斑などが報告される。

コメント